肥料は野菜の成長に不可欠な栄養素を補給する重要な資材です。2024年の農業統計によると、家庭菜園での失敗の約30%が不適切な施肥によるものとされています。適切な肥料の選択と使用方法を知ることで、より健康で収穫量の多い野菜作りが可能になります。今回は、初心者の方でも実践できる肥料の基礎知識をご紹介します。
肥料の種類と特徴
肥料には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。
【三要素の役割】
- 窒素(N):葉や茎の成長を促進、光合成を活発化
- 不足症状:葉が黄色くなる、生育不良
- 過剰症状:徒長、病害虫への抵抗力低下
- リン酸(P):根の発達と花・実の形成を促進
- 不足症状:葉が紫色がかる、開花不良
- 過剰症状:他の栄養素の吸収阻害
- カリウム(K):病害虫への抵抗力を高める、糖度を上昇
- 不足症状:葉縁が褐色化、果実の味が落ちる
- 過剰症状:葉焼け、根の生育阻害
【肥料の形状による分類と特徴】
- ①粒状肥料
- 特徴:使いやすく、効果が長持ち(2-3ヶ月)
- 用途:基肥として最適
- 注意点:水やりで流れ出しやすい
- 施用量:1㎡あたり100-200g程度
- ②液体肥料
- 特徴:即効性があり、効果は7-10日程度
- 用途:生育期の追肥に適する
- 注意点:濃度調整が重要(一般的に500倍希釈)
- 施用間隔:2週間に1回程度
- ③固形肥料
- 特徴:ゆっくりと効果が出る(3-4ヶ月持続)
- 用途:長期的な栄養補給
- 注意点:効果の発現に時間がかかる
- 施用量:製品の指示に従う
基肥と追肥の使い分け
【基肥の特徴と使用方法】
- 植え付け前に施用(2週間前が目安)
- 野菜の初期生育を支える
- 深さ15cm程度まで混ぜ込む
- 効果は2-3ヶ月持続
- 施用量の目安:1㎡あたり2-3kgの堆肥と100-200gの化成肥料
【追肥の特徴と使用方法】
- 生育期間中に施用(2週間おきが基本)
- 生育状態を見ながら調整
- 株元から10cm離して施用
- 施用後は軽く土寄せ
- 雨天時は避ける
有機肥料と化学肥料の特徴
【有機肥料】 主な種類と特徴:
- 堆肥:土壌改良効果が高い(施用量:1㎡あたり2-3kg)
- 魚かす:窒素分が豊富(施用量:1㎡あたり100-200g)
- 骨粉:リン酸分が豊富(施用量:1㎡あたり100g)
- 油かす:持続性がある(施用量:1㎡あたり200g)
メリット:
- 土壌環境を改善
- 土の生態系を守る
- 持続的な効果
- 過剰施肥のリスクが低い
デメリット:
- 効果の発現が遅い
- 値段が比較的高い
- 保管に注意が必要
- 臭いが気になることがある
【化学肥料】 主な種類と特徴:
- 化成肥料:バランスが良い(N-P-K=8-8-8など)
- 尿素:窒素分が多い(N=46%)
- 過リン酸石灰:リン酸分が多い(P=17-18%)
- 硫酸カリ:カリウム分が多い(K=50%)
メリット:
- 即効性がある
- 効果が安定している
- 価格が手頃
- 取り扱いが容易
デメリット:
- 過剰施用のリスク
- 土壌環境への影響
- 連用による塩類集積
- 肥料焼けの危険性
野菜別の施肥時期と量
【葉物野菜】
- 基肥:植え付け2週間前(1㎡あたり化成肥料100g+堆肥2kg)
- 追肥:生育期に2回程度(1㎡あたり20-30g)
- 重視する要素:窒素
- 注意点:追肥は葉が濡れていない時に
【果菜類】
- 基肥:植え付け2週間前(1㎡あたり化成肥料150g+堆肥3kg)
- 追肥:開花期から10日おき(1㎡あたり30-40g)
- 重視する要素:リン酸とカリウム
- 注意点:実の肥大期は特に重要
【根菜類】
- 基肥:植え付け2週間前(1㎡あたり化成肥料100g+堆肥2kg)
- 追肥:根の肥大初期に1回(1㎡あたり20g)
- 重視する要素:リン酸
- 注意点:窒素過多に注意
次回は、病害虫対策について詳しくご説明していきます。