家庭菜園

第3章 栽培の基本技術:3.3 肥料の知識と使い方

肥料は野菜の成長に不可欠な栄養素を補給する重要な資材です。2024年の農業統計によると、家庭菜園での失敗の約30%が不適切な施肥によるものとされています。適切な肥料の選択と使用方法を知ることで、より健康で収穫量の多い野菜作りが可能になります。今回は、初心者の方でも実践できる肥料の基礎知識をご紹介します。

肥料の種類と特徴

肥料には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。

【三要素の役割】

  • 窒素(N):葉や茎の成長を促進、光合成を活発化
    • 不足症状:葉が黄色くなる、生育不良
    • 過剰症状:徒長、病害虫への抵抗力低下
  • リン酸(P):根の発達と花・実の形成を促進
    • 不足症状:葉が紫色がかる、開花不良
    • 過剰症状:他の栄養素の吸収阻害
  • カリウム(K):病害虫への抵抗力を高める、糖度を上昇
    • 不足症状:葉縁が褐色化、果実の味が落ちる
    • 過剰症状:葉焼け、根の生育阻害

【肥料の形状による分類と特徴】

  • ①粒状肥料
  • 特徴:使いやすく、効果が長持ち(2-3ヶ月)
  • 用途:基肥として最適
  • 注意点:水やりで流れ出しやすい
  • 施用量:1㎡あたり100-200g程度
  • ②液体肥料
  • 特徴:即効性があり、効果は7-10日程度
  • 用途:生育期の追肥に適する
  • 注意点:濃度調整が重要(一般的に500倍希釈)
  • 施用間隔:2週間に1回程度
  • ③固形肥料
  • 特徴:ゆっくりと効果が出る(3-4ヶ月持続)
  • 用途:長期的な栄養補給
  • 注意点:効果の発現に時間がかかる
  • 施用量:製品の指示に従う

基肥と追肥の使い分け

【基肥の特徴と使用方法】

  • 植え付け前に施用(2週間前が目安)
  • 野菜の初期生育を支える
  • 深さ15cm程度まで混ぜ込む
  • 効果は2-3ヶ月持続
  • 施用量の目安:1㎡あたり2-3kgの堆肥と100-200gの化成肥料

【追肥の特徴と使用方法】

  • 生育期間中に施用(2週間おきが基本)
  • 生育状態を見ながら調整
  • 株元から10cm離して施用
  • 施用後は軽く土寄せ
  • 雨天時は避ける

有機肥料と化学肥料の特徴

【有機肥料】 主な種類と特徴:

  • 堆肥:土壌改良効果が高い(施用量:1㎡あたり2-3kg)
  • 魚かす:窒素分が豊富(施用量:1㎡あたり100-200g)
  • 骨粉:リン酸分が豊富(施用量:1㎡あたり100g)
  • 油かす:持続性がある(施用量:1㎡あたり200g)

メリット:

  • 土壌環境を改善
  • 土の生態系を守る
  • 持続的な効果
  • 過剰施肥のリスクが低い

デメリット:

  • 効果の発現が遅い
  • 値段が比較的高い
  • 保管に注意が必要
  • 臭いが気になることがある

【化学肥料】 主な種類と特徴:

  • 化成肥料:バランスが良い(N-P-K=8-8-8など)
  • 尿素:窒素分が多い(N=46%)
  • 過リン酸石灰:リン酸分が多い(P=17-18%)
  • 硫酸カリ:カリウム分が多い(K=50%)

メリット:

  • 即効性がある
  • 効果が安定している
  • 価格が手頃
  • 取り扱いが容易

デメリット:

  • 過剰施用のリスク
  • 土壌環境への影響
  • 連用による塩類集積
  • 肥料焼けの危険性

野菜別の施肥時期と量

【葉物野菜】

  • 基肥:植え付け2週間前(1㎡あたり化成肥料100g+堆肥2kg)
  • 追肥:生育期に2回程度(1㎡あたり20-30g)
  • 重視する要素:窒素
  • 注意点:追肥は葉が濡れていない時に

【果菜類】

  • 基肥:植え付け2週間前(1㎡あたり化成肥料150g+堆肥3kg)
  • 追肥:開花期から10日おき(1㎡あたり30-40g)
  • 重視する要素:リン酸とカリウム
  • 注意点:実の肥大期は特に重要

【根菜類】

  • 基肥:植え付け2週間前(1㎡あたり化成肥料100g+堆肥2kg)
  • 追肥:根の肥大初期に1回(1㎡あたり20g)
  • 重視する要素:リン酸
  • 注意点:窒素過多に注意

次回は、病害虫対策について詳しくご説明していきます。